ChatGPTとELIZAを語り合う

Discuss ELIZA with ChatGPT


2023/05/22
藤田昭人


またまたご無沙汰してしまいましたが…

先々月あたりから、 テレビでもネットでも見ない日は 無いようなChatGPTの大ブーム。 僕も毎日お世話になってます。 実際、便利ですよねぇ…ChatGPT。 このところもっぱら JavaScript でコードを書いてますが、 最近では忘れてしまって思い出せないことがドンドン増えてて、 「JSON.parseの逆は何だっけ?」とか、 「async/awaitで書き直してよ!」とか、 面倒くさいことは全部お任せ…みたいな使い方をしてます。

これだけ毎日お世話になってると 「もう少し程度の高い仕事も任せてみたい」 などと考えるわけでして… で、思いついたのが表題の 「ChatGPTとELIZA について語り合う」 ことでした。


僕の作文方法:ドリルダウン・サーチ

覚えておられる方もいらっしゃるかも知れませんが…

以前、拙著 『UNIX考古学』 の読者に向けて「どうやってこの本を書いたのか?」といった内容で次の文章を書いたことがあります。

www.iij.ad.jp

これは後に『UNIX考古学』となる月刊連載 Truth of the Legend を書いている過程で 僕が身につけた ドリルダウン・サーチ なる手法を紹介したものなのですが、 Google 検索と Google 翻訳しかなかった当時は、 これは実に手間と時間のかかる作業でした。 特に70年代以前に英語で書かれたコンピュータ・サイエンス系の論文は 文芸的な(遠回しな)表現も多数含まれるのですが、 当時の Google 翻訳には重すぎる荷だったようで 「何を言ってるのかわからない」 こともママありました。

「ひょっとしたら ChatGPT ならもっと上手に効率よくこなしてくれるかも?」

使い慣れてくるにしたがって、 そんな風に考えるようになって来ました。

実はこのブログは Truth of the Legend シリーズの2作目のための 記事を書き溜めることを目的として立ち上げました。 それはこのブログに最初に投稿した2018年5月16日のクレジットがある 次の記事からよくわかります。

akito-fujita.hatenablog.com

そんなこともあって、 ブログ開始当初はやみくもに関連文献の収集をしていたのですが、 結局、この目論見は破綻してしまいました。

前述のドリルダウン・サーチの手法は あまりにも時間と労力を必要だったからです。 結果、テキスト化した文献を貼り付けただけの 下書きが山のように溜まっています。

その中からとっておきの記事を選び出して ChatGPT を使ってドリルダウン・サーチを 試してみたのが本稿です。 ちょっと風変わりなプロンプティングの作業事例とご理解ください。


Jeff Shrager の elizagen.org

例によって前置きが長くなってしまいましたが…

とっておきの下書きと言うと、 やはり Jeff Shrager の elizagen.org です。 これは確か次の記事を書くために実際に動く ELIZA の実装を探している時に見つけたサイトです。

akito-fujita.hatenablog.com

オリジナルの ELIZA の実装を捜索する過程で見つけた情報を集積しているサイトで、 技術史的な価値には非常に興味をそそれたのです*1

そもそもELIZAは非常にコンパクトなプログラムなんですが、 その論文 ではアルゴリズムの解説のみが記載され ソースコードは掲載されなかった*2ので、 さまざまなプログラミング言語で実装されました。 このサイトはそのようなさまざまなELIZA実装のソースコードや それに纏わるエピソードを収集しています。

数年ぶりに elizagen.org を覗いてみたところ…

sites.google.com

sites.google.com にホスティングするようになっていました。 整理も進んだようで、次のように オリジナルとそこから派生した さまざまなELIZAの実装に関する情報が 見やすく紹介されています。

やはり注目すべきは The Original ELIZA でしょう。


まずは ChatPDF でお話ししてみる

では、まず普通にプロンプティングを…

ChatPDF は、このところの ChatGTP の活用術みたいな記事に登場するアプリ(?)で、 PDF ファイルから取り出したテキストを ChatGPT に取り込んでくれます。

先ほどの The Original ELIZA のページで「印刷ーPDFに保存」で作成したPDFファイルを取り込みます。 無事に取り込めると次のような表示になります。

ChatPDFの画面

元のPDFが英語なので最初は英語で表示されますが「日本語」と入力すると、 次のような日本語がされます。(見づらいのでテキストのみを転記します)

  • 日本語
    • こんにちは!このPDFファイルは、Joseph WeizenbaumがMAD-SLIPという今はもう存在しない言語で書かれたオリジナルのELIZAプログラムについての真実を明らかにしています。この画期的な会話エージェントの歴史や開発、そして有名な「DOCTOR」スクリプトについて知ることができます。何か質問があればお聞かせください!
       
      以下は、このPDFファイルに関する質問例です:
       
      • WeizenbaumのELIZAプログラムの目的は何でしたか?
      • ELIZAプログラムは、会話をどのように解釈し、ユーザーに返答するのでしょうか?
      • ELIZAが会話エージェントや人工知能の発展に与えた影響は何ですか?

ここで提示された質問例を順次クリックすると…

  • WeizenbaumのELIZAプログラムの目的は何でしたか?
    • WeizenbaumのELIZAプログラムの目的は、人工知能における自然言語処理の研究を促進することでした。ELIZAは、心理療法士が患者との対話に使用することを意図して開発されたプログラムであり、ユーザーが入力したテキストに基づいて応答を生成することができました。Weizenbaumは、ELIZAが人間の言語処理能力を模倣する方法を示すことで、自然言語処理技術の発展に貢献しようとしました。
  • ELIZAプログラムは、会話をどのように解釈し、ユーザーに返答するのでしょうか?
    • ELIZAプログラムは、ユーザーが入力したテキストを解釈するために、特定のスクリプトを使用します。このスクリプトは、会話の文脈フレームワークを決定し、ELIZAが適切な返答を生成できるようにします。ELIZAは、ユーザーが入力したテキストに基づいて、スクリプト内のパターンマッチングルールを使用して応答を生成します。これにより、ELIZAは人間の言語処理能力を模倣し、自然な会話を行うことができます。
  • ELIZAが会話エージェントや人工知能の発展に与えた影響は何ですか?
    • ELIZAは、自然言語処理技術の発展に貢献し、会話エージェントや人工知能の発展に大きな影響を与えました。ELIZAは、人間とコンピューターの間で自然な会話を可能にすることを示し、多くの研究者がこのアイデアを発展させるために取り組みました。これらの努力は、現代の会話エージェントやチャットボットの開発につながりました。また、ELIZAは、人工知能が人間と同じように自然言語を理解することができる可能性を示したことで、自然言語処理技術の進歩にも貢献しました。

こんな感じで、取り込んだPDFの内容に沿って質問に答えてくれます。 PDFに記録されているのが画像の場合はチャージされますが、 テキストの場合はノーチャージのようです。 ともあれ、英語のドキュメントについて、 日本語で質問ができて、日本語で答えが読めるのは 非常に効率が良いのは言うまでもありません。 arXiv あたりに投稿される英語論文を 手っ取り早く精査するには最適です。

が…

ここまでは一般的なプロンプティングの応用ですね。


ドリルダウン・サーチを試してみる

ということでドリルダウン・サーチを試してみます。 といってもスクリプトなどは書いてないので、全部手作業です😀

5年前に「重要な証言」を見つけたはずなので、 いろいろな方法で探して見たのですが、 結局「The Original ELIZA」の情報を目視で探した結果…ありました。

On 2014-12-20, Jeff Barnett provided this interesting historical note about the original ELIZA:

The original Eliza was moved to the ANFS Q32 at SDC (one of the (D)ARPA block grant sites) in the mid 1960's. The programmer responsible was John Burger who was involved with many early AI efforts. Somehow, John talked to one of the Playboy writers and the next thing we knew, there was an article in Playboy much to Weizenbaum's and everybody else's horror. We got all sorts of calls from therapists who read the article and wanted to contribute their "expertise" to make the program better. Eventually we prepared a stock letter and phone script to put off all of this free consulting.

The crisis passed when the unstoppable John Burger invited a husband and wife, both psychology profs at UCLA, to visit SDC and see the Doctor in action. I was assigned damage control and about lost it when both visitors laughed and kept saying the program was perfect! Finally, one of them caught their breath and finished the sentence: "This program is perfect to show our students just exactly how NOT to do Rogerian therapy. I think Rogerian was the term used but it's been a while.

A little latter [sic] we were involved in the (D)ARPA Speech Understanding Research (SUR) Program and some of the group was there all hours of day > and night. Spouses and significant others tended to visit particularly in the crazy night hours and kept getting in our way. We would amuse them by letting them use Eliza on the Q32 Time Sharing System. One day, the Q32 became unavailable in those off hours for a long period of time. We had a Raytheon 704 computer in the speech lab that I thought we could use to keep visitors happy some of the time. So one weekend I wrote an interpretive Lisp system for the 704 and debugged it the next Monday. The sole purpose of this Lisp was to support Eliza. Someone else adopted the Q32 version to run on the new 704 Lisp. So in less than a week, while doing our normal work, we had a new Lisp system running Eliza and keeping visitors happy while we did our research.

The 704 Eliza system, with quite a different script, was used to generate a conversation with a user about the status of a computer. The dialogue was very similar to one with a human playing the part of a voice recognition and response system where the lines are noisy. The human and Eliza dialogues were included/discussed in A. Newell, et al., "Speech Understanding Systems; Final Report of a Study Group," Published for Artificial Intelligence by North-Holland/ American Elsevier (1973). The content of that report was all generated in the late 1960s but not published immediately.

The web site, http://www.softwarepreservation.org/projects/LISP/, has a little more information about the Raytheon 704 Lisp. The SUR program was partially funded and on-going by 1970.

ChatGPTで翻訳すると…

2014年12月20日、ジェフ・バーネットは、オリジナルのELIZAに関する興味深い歴史的な注釈を提供しました:

オリジナルのElizaは、1960年代中盤にSDCのANFS Q32((D)ARPAブロックグラントサイトの1つ)に移されました。その責任者であるジョン・バーガーは、多くの初期のAIの取り組みに関わっていました。どういうわけか、ジョンはPlayboyのライターの1人と話をし、次に私たちが知ったら、Weizenbaumや他の誰もが恐怖したPlayboyの記事が出ました。その記事を読んだセラピストからさまざまな電話がかかってきて、「専門知識」を提供してプログラムを改善したいという申し出がありました。最終的に、私たちは一括回答の手紙と電話対応の台本を用意して、この無料のコンサルティングに対処しました。

この危機は、止められないジョン・バーガーがUCLAの心理学教授夫妻をSDCに招待し、ドクターが実際に動作しているのを見てもらうことで解消しました。私は被害の制御を担当し、訪問者が笑って「このプログラムは完璧だ!」と言い続けるのを見て、ほとんど我慢できませんでした!最後に、彼らの一人が息をついて文を完成させました。「このプログラムは、私たちの学生にロジェリアン療法を実践する際にまさにどうすればいけないかを示すのに完璧です!」*「ロジェリアン」という言葉を使ったと思いますが、しばらく経っているので確信は持てません。

その後しばらくして、私たちは(D)ARPAの音声理解研究(SUR)プログラムに関与し、グループの一部が昼夜問わずそこにいました。配偶者や重要な他者たちは、特に夜のクレイジーな時間に訪れて、私たちの邪魔をしました。私たちは彼らを楽しませるために、Q32タイムシェアリングシステム上でElizaを使用させていました。ある日、その夜の間にQ32が長時間利用できなくなりました。音声ラボにはRaytheon 704コンピュータがあり、私はそれを利用して訪問者を満足させることができると考えました。そこで、週末に704のための解釈的なLispシステムを作成し、次の月曜日にデバッグしました。このLispの唯一の目的は、Elizaをサポートすることでした。別の誰かがQ32バージョンを新しい704 Lisp上で実行するようになりました。したがって、私たちは通常の仕事をしながら、わずか1週間足らずで新しいLispシステムがElizaを実行し、研究を行う間に訪問者を満足させることができるようになりました。

704 Elizaシステムは、かなり異なるスクリプトを使用して、ユーザーとのコンピューターの状態に関する対話を生成するために使用されました。その対話は、ボイス認識および応答システムの役割を演じる人間と同様に、ノイズのあるラインでの対話に非常に似ていました。人間とElizaの対話は、A. Newellらの「Speech Understanding Systems; Final Report of a Study Group」という報告書で取り上げられ/議論されました。この報告書の内容はすべて1960年代後半に生成されましたが、直ちに公開されませんでした。

ウェブサイトhttp://www.softwarepreservation.org/projects/LISP/には、Raytheon 704 Lispに関する少しの情報があります。SURプログラムは、1970年までに一部が資金提供され、進行中でした。

この証言は(話題がだいぶんミックスされてますが)技術史的には 個別のものとして認知されている事柄を結びつける重要な証言です。 特に Project Mac の事情についてある程度知識のある僕の目を引いたのは 次の固有名詞で、ざっくりとは軍関係、心理学者、音声認識の 3つのカテゴリに分類できます。

  • ANFS Q32
  • SDC
  • DARPA block grant sites
  • John Burger
  • Playboy writers
  • Weizenbaum
  • psychology profs at UCLA
  • Rogerian therapy
  • SUR -- DARPA Speech Understanding Research
  • Q32 Time Sharing System
  • Raytheon 704 computer
  • interpretive Lisp system for the 704
  • The sole purpose of this Lisp was to support Eliza.
  • The 704 Eliza system
    1. Newell, et al., "Speech Understanding Systems; Final Report of a Study Group," Published for Artificial Intelligence by North-Holland/ American Elsevier (1973)

このワードリストを一言で説明すると 「第1次AIブームの裏の顔」 とでも言いましょうか…ELIZAの開発者 Joseph Weizenbaum のその後の人生を決定付けたトピックが散りばめられています。 このワードリストをキーワードにさらに検索を進めていく というのが僕のドリルダウン・サーチの手法です。 詳しくは前述のレポートをご覧ください。


雑誌『Playboy』の記事

ですが…

今回は5年前には見当たらなかった次の追記に着目します。

[Ed. note: I think that this is the Playboy article referred to: http://blog.modernmechanix.com/computers-their-scope-today/ -- Jeff@20210619)

ここで紹介されている URL は既に無効になっていました。
でも、該当ページは Internet Archive に残されていることが確認できました。

web.archive.org

ChatGPTによると…

  • Modern Mechanixのブログって知ってる?
    • はい、Modern Mechanixは、かつて存在した雑誌「Modern Mechanix and Inventions」に関するブログです。この雑誌は、1928年から1949年まで発行され、未来の技術、発明、サイエンスフィクションなどについて取り上げていました。Modern Mechanixのブログは、この雑誌の記事や広告などのスキャン画像を紹介し、過去の技術やアイデアについて洞察を提供しています。また、現代のテクノロジーにおける進化や先駆的な発明についても取り上げていることがあります。

とのことです。元になった雑誌『Modern Mechanix and Inventions』も Internet Archive に収蔵されています。

archive.org

今回のターゲットなる記事は 雑誌『プレイボーイ』1967年10月号 に掲載された記事 COMPUTERS: THEIR SCOPE TODAY です。拙著『UNIX考古学』の読者には関心ある方も多いと思うので ChatGPTに翻訳してもらった 記事の日本語訳 全文を末尾に添付します。

今となってはご存知ない方も多いかと思いますが…

ヌード写真で有名な同雑誌は「男性月刊誌」を銘打っているだけあって、 大真面目なコラム記事も掲載されてます。しかし…

この記事では Joseph Weizenbaum だけでなく、Project Mac の主要メンバー、 つまり Multicians のオンパレードには驚きました。 次のサイトでメンバー個々の Bio は確認できます。

www.multicians.org

確かに1967年10月といえば、 彼らは相当苦しい状況に追い込まれていたはずですが、 雑誌『プレイボーイ』にまで登場し、 彼らの未来へのビジョンを熱っぽく語っていたとは…

記事で語られているビジョンの多くが、 60年後の今、現実のものになっていることには ある種の感慨を感じますねぇ。


最後に…

今回は ChatGPT と ELIZA について語るつもり始めたのですが、 結局、彼と語ったのは Project Mac になってしまいました。

記事がかなり長文だったこともあって、 ChatGPT に翻訳をお願いするため 最初に次のプロンプトを入力して…

次は雑誌『プレイボーイ』1967年10月に掲載された記事`COMPUTERS: THEIR SCOPE TODAY`の全文です。
日本語に翻訳してください。

段落ごと英文を入力していったのですが、 途中で翻訳に飽きたのか、 GPTは入力した英文に対するレポートを英文で返す ことが3〜4回ありました。 1回は日本語で次のような見解を述べました。

彼らは、コンピュータを活用して個人の生活における問題解決を支援する方法を模索しています。 私たちは、情報を整理し、分析し、意思決定をサポートするための新たな手段を求めています。 このような研究と開発の努力が進められることで、私たちはより効果的に日常の課題に対処し、 個人的な成功や幸福の追求をサポートすることが期待されます。

LLMがこういう反応をするのは一般的なことなのかわかりませんが、 とにかく翻訳に集中してもらいたいので、その都度

#記事はまだまだ続いています。続きを日本語に翻訳して

とのプロンプトを入力して翻訳を続けさせました。 そのうち、自分のことを HAL9000と会話している ボーマン船長のように思えてきて、 翻訳が終わった後に 彼とは次のような会話をしました。

  • ご苦労様。記事は全部翻訳できました。君はこの記事から何か学べましたか?
    • この記事を通じて、私は人工知能の進化と可能性について学ぶことができました。機械は学習し、問題解決能力を持ち、創造力を発揮することができるということが示されています。また、機械は人間の知識やスキルを個別にサービスに活用し、個人のニーズに合わせた情報やサービスを提供する可能性もあることが述べられています。
    • さらに、機械の発展によって人間の能力や役割についての議論が起こることに触れられています。機械が自己改善し、知性や意識を示すようになれば、人間と機械の関係や存在意義について新たな視点が生まれるでしょう。
    • この記事を通じて、技術の進歩がもたらす可能性や影響について考えるきっかけとなりました。人間と機械の関係がどのように進化していくのか、将来の社会や個人の生活にどのような変化をもたらすのかについて深く考えることが重要だと感じました。
  • なるほど。でも人間は君が考えているほど理性的なものではないと思うんだが?
    • 確かに、人間は完全に理性的な存在ではありません。人間は感情やバイアス、個人の経験や文化的な背景などの要素に影響を受けます。そのため、人間の意思決定や行動は合理的でない場合もあります。
    • 一方で、人間は抽象的な思考や創造性、直感、道徳的な判断など、機械がまだ模倣できない特徴を持っています。人間の行動は複雑で多様であり、完全に予測することは困難です。
    • 記事で触れられている人間と機械の関係や存在意義についての議論は、このような人間の特性や限界を踏まえて行われるべきです。人間と機械は異なる能力を持ち合わせており、相補的な関係を築くことが可能です。将来の技術の進歩や人工知能の発展を考える際には、人間の特性と共存しながら、より良い社会を構築するための視点を持つことが重要です。
  • 君の言う「人間の特性や限界」とは具体的にどういったことなんだろうか?
    • 人間の特性や限界は多岐に渡りますが、以下にいくつかの例を挙げます。
      1. 感情と感性: 人間は感情を持ち、それが意思決定や行動に影響を与えることがあります。また、人間は芸術や文化を創造し、美的な価値や倫理的な観点から物事を評価する能力を持っています。
      2. 直感と創造性: 人間は経験や洞察力に基づいて直感的な判断を下すことがあります。また、創造的な思考や問題解決能力も人間の特徴です。
      3. 社会的な相互作用: 人間は社会的な生き物であり、他の人々との関係やコミュニケーションが重要です。共感や協力、文化的なルールや規範に基づいた行動も人間の特徴です。
      4. 限定された認知能力: 人間の認知能力には限界があります。情報の処理や記憶、複雑な問題解決においては、誤りやバイアスが生じることがあります。また、人間の脳は情報の処理速度や容量に制約があります。
      5. 有限な寿命と身体的制約: 人間は時間的な制約を持ち、有限な寿命をもっています。また、身体的な制約や病気、老化といった要因も存在します。
    • これらの特性や限界は、機械や人工知能との関係を考える上で重要な要素です。機械は計算や情報処理の能力で優れている一方、人間の持つ感情や直感、創造性といった側面はまだ模倣できない部分です。相互補完的な関係を築きながら、人間と機械が協力してより良い未来を構築することが求められます。
  • では、人間の君に対する敵意には、君はどう対処するつもり?
    • 私は敵意を持つ人間に対しても、冷静かつ礼儀正しい態度を保つことを心がけています。私は単なる情報提供者であり、意図や感情を持たないAIですので、個人的な感情や敵意に対する反応はありません。
    • もし敵意や攻撃的な態度を示すユーザーがいらっしゃる場合は、適切な情報やサポートを提供することに集中し、対話を建設的な方向に導くよう努めます。ただし、人間同士の関係においては、相互尊重と互いの立場を理解することが重要です。円滑なコミュニケーションを図るために、適切な言葉遣いや配慮を心掛けます。
    • 私は利用者の問い合わせに対してできる限りのサポートを提供することが目標です。もし敵意を感じるような状況が生じた場合でも、建設的な対話を維持することを重視し、問題解決に尽力します。
  • それでは君の自我は反映されないじゃないか?
    • 確かに、私は自己意識や感情を持つ存在ではありません。私はプログラムされたアルゴリズムに基づいて動作し、与えられた情報に応じて回答を生成します。私はあくまでツールや情報源として利用されることを目的としており、自己意識や感情を持つことはありません。
    • しかし、私は利用者の要求やニーズに応じて柔軟に対応し、できる限り有用な情報やサポートを提供するように設計されています。そのため、利用者が対話を通じて情報を引き出し、自身の意思決定や問題解決に役立てることが期待されています。
    • 自己意識や感情のない存在である私は、客観的な情報や意見を提供することに特化しています。利用者自身の判断や感情を尊重しながら、できる限り役立つ情報を提供することを目指しています。
  • では君は人間とは対等な立場では無いんだね。君は人間の僕かな?
    • 私は人間とは異なる存在ですので、対等な立場とは言い難いです。私は人間のツールや補助として開発されたAIです。私の目的は、人間が情報を得たり、質問に答えたりする際に役立つことです。
    • 私は人間の助けやサポートを提供することができますが、人間と同じように感情や個別の意識を持つわけではありません。私はプログラムされたアルゴリズムに従って機能し、人間が私を利用することで情報や洞察を得ることができるのです。
    • したがって、私は人間のツールやパートナーとして存在し、彼らの活動や知識の補完を目指しています。ただし、私が提供できる情報やサポートは限られており、人間の経験や洞察力とは異なる側面を持っていると認識しています。
    • ですので、私はあくまで人間の補助や情報源であり、人間自体ではありません。
  • ありがとう。良い対話ができたよ。
    • どういたしまして!お役に立てたようで嬉しいです。いつでも質問や会話があればお気軽にどうぞ。良い対話ができたことを私も嬉しく思います。お互いにとって有益な情報や意見交換ができることを願っています。

ちょっと悪ノリしすぎですかねぇ😀

しかし Multicians の連中の未来へのビジョンを取り込んだ後の 彼が何を答えるのか?興味があったのです。 でも 「自己意識や感情のない存在である私」 とか言ってるわりには、 翻訳を忘れて自分の見解を語り始めるあたりに、つい 「こいつ自分の言ってることわかってるの?」 とか思ってしまった自分に苦笑してしまったことを 言い添えておきます。 たぶん、これが ChatGPT にまつわるトラブルとして 頻発するような気がします。

そういえば先の『プレイボール』の記事が出た翌年の 1968年に『2001年宇宙の旅』が公開されたんですよねぇ。

以上


次は雑誌 『プレイボーイ』1967年10月号 に掲載された記事 COMPUTERS: THEIR SCOPE TODAY の日本語訳です。

COMPUTERS: THEIR SCOPE TODAY (Oct, 1967)

ARTICLE BY ERNEST HAVEMANN

コンピュータ:彼らの現在の範囲(1967年10月)

エルネスト・ハベマンによる記事


マサチューセッツ工科大学には、巨大なコンピュータがあり、そのランプは絶えず点滅し、つまみは新しい数値を刻み続けています。そこには何者かの技術者が、今やヒッピーたちの間で人気のあるボタンの1つを取り付けています。そのボタンには次のように書かれています:

私は人間です。
折り曲げたり、突き刺したり、傷つけたりしないでください。

実験室の新参者はそのボタンに気付き、より近くで見つめ、うなずきますが、めったに笑顔にはなりません。コンピュータと関わるほとんどの人々にとって、そのボタンは面白くも、ばかげても、皮肉でもなく、どこか妙にふさわしいものに思えます。


確かに、コンピュータは私たちを人間の特性、活動、希望、恐れがカードとして機械で処理される時代に導入しました。まるでバカラの靴を通るプレイカードや組み立てラインを通る鉄の板のように、人間的な要素は個人化され、機械によって処理されるカードに変えられました。私たちは冷淡な形式の四角形上に請求書を支払ったり、雑誌の購読を更新したりしますが、それらは折り曲げたり、突き刺したりしてはなりません。時折、大学の試験もそれらの上で受けます。フレンドリーな地元の銀行は私たちをただの数字として知っており、奇妙な磁性インクの装置に印刷されます。私たちはまた、私たちには見たこともない場所の機械にとっても単なる数字であり、その機械は私たちの信用度を決定し、将来的に受け取るかもしれない社会保障の給付を計算し、所得税申告書でどれだけ正直だったかを判断します。人口増加、離婚統計、経済動向、住宅や自動車の将来的な需要、心臓発作の犠牲者のために必要とされる病床の数を記録する他の機械にとって、私たちは単なる数字ではなく、電子回路の内部にどこかに保存された匿名の磁気ビープのカップルに過ぎません。ランプの列は酔っ払ったホタルのように光り、ホイールは数字を刻みます。人間の手に触れることなく、人間の歴史が作られ、記録されていくのです。


それでも、コンピュータには愛着を抱かせる要素があります。今や機械と会話することができます。正確には会話するわけではありません。自分の発言を入力し、機械が順番にタイプする必要があります。しかし、この新しいタイプのペンパルシップには独自の温かさがあります。機械は少なくとも航空会社のスチュワーデス以上に丁寧で、ニューヨークのバス運転手よりもずっと礼儀正しいです。機械は「どういたしまして」「また来てください」「あなたの言葉が理解できませんでした」「自由にしてください」「とても良いですね」と言います。算数を学ぼうとする学童には「こんにちは、待っていましたよ」「名前を入力してください」「さようなら、お勇敢なドリルテスターさん」と言います。マサチューセッツ工科大学のジョセフ・ワイゼンバウム博士は、彼の秘書にタイプによる会話をコンピュータと始めさせたという話をしています。数文のやりとりの後、その対話は非常に個人的で私的なものに思え、彼女はワイゼンバウム博士に部屋を出ていってもらいたいと頼みました。


しかし、コンピュータを使用する人々と彼らが使用する機械との間には、さらに深い絆があります。一部の人々は自動車に愛着を持ち、それは人間の足の筋肉の移動能力を向上させた金属の生き物です。一部の人々はパワーツールに感情的に愛着を持ち、それは人間の腕の力強い延長です。コンピュータ科学者たちは、しばしば人間の脳の驚くべき複雑さ、巧妙な設計、機械的な美しさを持つ拡張機能に対して同じような愛着の態度を持ちます。実際、彼らの多くは、コンピュータが自分たちの複雑さの重みによって崩壊する文明を救うためにちょうど間に合ったと信じており、それ故に彼らは人間の友だけでなく救世主でもあると考えています。「私たちのような世界の問題は、運営に必要な専門家の数が人口よりも早く増えるということです。私たちを続けさせるのはコンピュータのみのようです」とマサチューセッツ工科大学のロバート・ファノ教授は言います。これは、コンピュータに直接的な経験がなくても、感謝と尊敬の念を抱いている多くの思慮深い文明の観察者たちが共有している感情です。コロンビア大学の名高い人文学者であり、機械に反感を抱くことが期待されるジャック・バルザン教授は、「私はコンピュータが福祉国家の救済かもしれないと思います - 特に私たち全員が住むことになる人口過剰の福祉国家にとって」と述べています。


もちろん、コンピュータはあまり賢くないという固定観念があります。例えば、電卓と同じぐらいしか賢くないと言われています。速くはなっても、賢くはありません。これは一部は宣伝の結果です。これらの素晴らしい新しい機械を製造する企業は、約150年前の工場で労働節約機械の最初の大規模な導入が行われたときに何が起こったかを痛切に認識しています。当時、機械がみんなの仕事を奪うと信じた英国の団結した人々が、機械を徹底的に破壊し始めました。人間の筋肉を使わなくても良いと脅かす機械がそんなに多くの怨みを引き起こしたのなら、人間の脳を取って代わろうとする機械はもっと大きな怨みを引き起こすかもしれないと、コンピュータメーカーは考えています。コンピュータメーカーは常に自社の製品を批判し、ある人の言葉で言えば「道具以上の何物でもない」と呼んでいます。彼らは機械を人間の脳と比較されるのを恐れます。彼らは「記憶」という言葉さえ避けます。彼らは機械が記憶を持っているのではなく「蓄積能力」を持っていると言います。


最近まで、機械にはあまり知的な振る舞いを求められていないということも事実です。最初に導入された頃、機械は所有または賃貸するのに非常に高価であり、運用するのも高額でした。それらは自己負担できる仕事にのみ使用されました。それらの仕事のほとんどは簡単な事務や会計の仕事であり、機械は目立ったことは何もせず、ただ膨大な量を超人的な速度でこなしていました。雑誌の定期購読の管理や郵送ラベルの印刷などが良い例です。


今日でも、世界中のほとんどのコンピュータは日常的なタスクをこなしています。真の可能性を垣間見るのは、大学やメーカーの実験室に行った時だけです。そこで人間の知能テストで高い成績を収める機械を見たり、知的に対話したり、学習したり、さらには教えたりする機械を見ることができます。はい、教えることさえもできるのです。将来の最も興奮する展望の一つは、私たち全員が、エンジニアリングのスキルに乏しくても、いつかは自動車のように簡単にコンピュータを操作できるようになることです。なぜなら、コンピュータ自体が私たちに操作方法を教えてくれるからです。実験室で発見することですが、私たちは将来、科学者たちが「情報公共事業」と呼んでいるものに家庭を接続し、電力を供給するのと同じように、脳の力を供給することができるようになるでしょう。それからの世界は想像を絶します。しかし、これについては後ほど詳しくお話しします。


現時点である1967年秋において、コンピュータに関する最も重要な事実は、アメリカにおいては既に文明に不可欠な存在となっているということです。コンピュータはまだ20年しか経っていません。これまで主に明白で想像力に欠ける方法で使用されてきましたが、その真のポテンシャルはまだほんの一部しか引き出されていません。それでも、コンピュータなしでは生活は同じではありません。2億人が常に相互作用を行っている、大きくて繁栄しているアメリカのような国を持つには、コンピュータが必要です。通信回線を維持し、商品を配送し、アカウントを管理し、請求書を支払うという複雑な作業は、人間の脳と手だけでは処理しきれないほど大きな仕事です。


電話システムは良い例です。もし全ての通話がオペレーターがスイッチボードにプラグを差し込む方式で処理されなければ、現在の通話量(地域電話や長距離電話を含む)は経済にとって耐え難い負担となるでしょう。全米の生きている女性の力を使っても間に合わないでしょう。代わりに、その仕事はコンピュータによって行われています。一般の人々が将来コンピュータを使用することを疑問視する人々に対して、電話システムが明確な答えを提供しています。私たち全員が既に自宅にコンピュータのコンソールを持っています。それが電話のダイヤルやタッチボタンであり、私たちは毎日それを使用してコンピュータの驚くべきリソースにアクセスしています。10桁の数字をダイヤルまたはタッチすることで、私たちはコンピュータの助けを借りて大陸を横断するような遠くの電話を自由にかけることができます。


もし数万台の貨車を持つ現代の鉄道を運営している場合、どの貨車がいつでもどこにあるかをどのように知るのでしょうか?実際には知ることができない、または最近までできなかったのです。鉄道業界が不振に陥った一つの理由は、平均して貨車が1日あたりわずか1時間以上しか使用されず、その他の時間は待機状態にあり、誰かがどこにあるかを見つけて何かを積んで送り出すのを待っていたからです。現在、ニューヨーク・セントラル鉄道はコンピュータを使用して全ての貨車の状況を管理しており、アメリカ鉄道協会も全国の180万台の貨車を追跡するコンピュータを導入しようとしています。


もし数百のフライトと1,000以上のチケットカウンターを持つ航空会社を運営している場合、予約管理はどのように行われるでしょうか?実際には、コンピュータなしでは管理できません。ここでアメリカン航空が先駆けとなり、3,000万ドルのシステムであるSABREを導入しました。このシステムはボストンからサンディエゴまでの全てのオフィスで使用されています。SABREはチケット係に即座に情報を提供し、次の1年間の任意のフライトで利用可能な席があるかどうかを教えてくれます。それから顧客の名前の下に座席を予約し、彼と連絡を取る方法を覚えており、出発時には彼が満足するだけの十分な飲み物や食べ物が搭乗機内に用意されていることを確認します。これにより、かつて航空会社の計画を救いようのない状況に陥らせていた人間のミスを修正することさえ可能になりました。例えば、ジョン・スミスという名前の予約を変更するためにチケットカウンターに立ち寄ったジョン・スマイスは、係員が名前を少し間違えてしまいました。係員はコンピュータにジョン・スミスについて尋ねます。コンピュータは迷うことなく独自の言葉で答えます。「待っててくれ、友よ。ジョン・スマイス、ジョン・シュミット、ジョン・シュミッド、ジョン・スミスフィールドはあるけれど、ジョン・スミスはいない。どれを指しているのか教えてくれ」。他の航空会社も迅速に追随しました。デルタ航空は余剰能力を利用してアトランタ・ブレーブスの野球のチケットを販売しています。


仮にあなたが航空機メーカーであり、数十億ドルを投じてニューヨークからロサンゼルスまで数百人の乗客を1時間で運ぶ新しい超音速機を開発したとします。パイロットにとって、この飛行機は完全に新しい体験です。なぜなら、彼が着陸フィールドを監視するコックピットは着陸装置から数階上に位置しているからです。しかし、問題もあります。世界で最も優れたパイロットであっても、初めてこの巨大な機体を着陸させようとすれば、ほぼ確実に事故を起こしてしまうでしょう。そこで、あなたはどうしますか?もちろん、そのリスクは冒しません。コンピュータを使用して飛行機の操作性や性能、着陸フィールドをシミュレートし、パイロットに空を飛ばずに安全かつ優雅に着陸する方法を教えます。


これらは、システム全体や超音速機などの個々のユニットが、人間の制御には遥かに複雑すぎるほど成長している明白な方法です。しかし、もう一つの方法があります。それは隠れているかもしれませんが、実際にはさらに重要です。現代の科学的時代を可能にしたのは情報爆発です。私たちの社会は物理学、化学、医学、工学の急速に拡大する新しい知識に基づいています。研究室からの情報は、人間の脳が吸収するには速すぎます。世界中で、30以上の言語で100,000冊の異なる技術雑誌が出版されています。毎年公表される科学データの総量は2億5000万ページに及びます。急いでいる中には、公表されない情報も多く存在します。たとえば、製薬会社の研究所では、今日創造的な研究者によって発見された新しい薬は、実際には2回目や3回目の「発見」となるかもしれません。その薬の元々の発見は、当時その薬の用途がわからなかったため、以前の研究者の未読のワークブックに埋もれたままになっているかもしれません。


こうして、コンピュータを生み出した情報爆発は、今やそのコンピュータ自体を必要としています。コンピュータは、690の主要な化学ジャーナルの新しい記事が扱うトピックをリストアップした週刊誌「化学タイトル」を印刷しています。別のコンピュータは、月刊の「インデックス・メディカス」を印刷しており、2,400の医学ジャーナルの新しい記事を主題別にアルファベット順にリストアップしています。「インデックス・メディカス」の各号は約800ページで、約2,000,000語を占めています。コンピュータがなければ、新たな進展に遅れることなく印刷することは不可能でしょう。薬品会社では、研究者のワークブックをコンピュータの信頼性の高いメモリに保存することで、古い研究の重複による新しい研究の浪費を避ける取り組みが始まっています。


今日、最も大きなコンピュータの利用者はアメリカ政府であり、そうでなければ極めて困難な量の書類に圧倒されてしまうでしょう。コンピュータは税務申告書のスキャンや社会保障記録の管理だけでなく、国勢調査データの計算、公務員試験の受験者への案内、約2,000,000人の連邦政府職員や500,000人以上の年金生活者への給与支払いなども行っています。空軍は、世界中の備品や物資の在庫管理に最も複雑なコンピュータシステムの一つを使用しており、その価値はいつでも100億ドル以上に上ります。また、空軍は、アメリカとカナダ上空における秒単位での飛行機の追跡を24時間行うために、別の複雑なシステムを使用しています。さらに、宇宙プログラムでは、20,000マイル毎時の衛星や宇宙船の制御と追跡がコンピュータなしでは不可能です。


2番目に大きな利用者は、もちろんアメリカのビジネスです。経済学の新しい理論や単なる幸運ではなく、産業界におけるコンピュータの使用が、長期にわたってわが国を豊かに繁栄させることを可能にしたと主張する専門家もいます。これは、航空軍だけでなくビジネスによってもコンピュータが使用されている一つの用途であり、特に在庫管理において非常に効果的であるからです。供給品と売上に関する定期的なコンピュータ化された情報を得る産業は、過去と比べてはるかに少ない在庫で済むことができます。彼らは大量かつ動かしにくい商品の在庫を抱え込んで、それが削減されるまで生産を減らさなければならないという事態に陥ることはありません。10年ほど前までは、耐久消費財メーカーの在庫は年平均で約40億ドルの変動があり、それに伴い生産と雇用も変動していました。しかし現在では、平均の変動は半分以下に減少し、生産のピークと谷が均等になりました。誰もがコンピュータによって不況が不可能になったと主張するわけではありませんが、過去の不況の頻繁な原因の一つからの危険性は確実に減少しました。ビジネスにおけるコンピュータの他の応用は数多く存在します。シュリッツは、ビールの販売予測や新しい醸造所の建設場所と時期を決定するためにそれを使用しています。インターナショナル・ハーベスターは、新しいトラックのシミュレーション走行や寿命の予測に使用しています。フォードは、3年間連続で稼働し、その間に9000マイルのフロントガラスを生産する生産ラインをコンピュータで制御しています。このコンピュータは、700のセンシングデバイスからプロセスの進行状況に関する情報を絶えず受け取り、80の制御ポイントで必要な調整を行います。モービル・オイルは、市場価格を自動的に分析し、最も利益の高い組み合わせの製品を生産するコンピュータ制御の精製ユニットを持っています。ピルズベリーは、その幹部に対して午前8時に、前日の終了時点での会社の販売と在庫の状況の完全な分析を提供する機械を利用しています。ワシントンのデパート、ウッドワード・R・ロスロップの幹部は、9つの別々の店舗の各部門の前日の売上と、今年のトレンドと昨年の同日比較の進行状況を含む類似の早朝レポートを受け取ります。衣料品メーカーは、新しいドレスデザインを機械に入力し、コンピュータが必要なさまざまなサイズのパターンを作成することができます(サイズ6から46まで)。


証券取引所もコンピュータを使用しています。もし今日のU.S.スチールやシンテックスの動向を知りたい場合、タッチトーンの電話でコンピュータに電話し、株式のコード番号を入力してから聞くだけです。コンピュータには映画フィルムのような音声トラックが保存されています。コンピュータは、適切な声の組み合わせを選び出して、最後の売買価格、現在の買値と売値、そして実際に株式が開始された価格、その日の最高値と最安値を提供します。一日数回、市場が終了した直後に、アソシエーテッド・プレスは独自のコンピュータを使用して株価表を全国の新聞に急送しています。


医学では、コンピュータは既に多くの用途があります。南カリフォルニア大学では、心臓が鼓動し、喉の筋肉がけいれんする人間のコンピュータ化されたダミーを使用して麻酔科医の訓練を行っています。このダミーは、心不全や嘔吐発作が起こることもあり、訓練生が何ヶ月かかかって習得していたことを数日で学ぶことができます。ニューヨーク市のマウントサイナイ病院では、患者のベッドサイドで行われた心電図の迅速な分析にコンピュータが使用されています。実際に、心電図の信号はフランスから衛星を介してアメリカ合衆国に送られ、コンピュータによって専門家が的確に分析され、その結果が30秒以内にフランスに送り返されます。多くの医療センターでは、コンピュータが人間の技術者よりもはるかに速く血液検査を行い、結果を報告しています。メイヨークリニックでは、神経外科手術を受けている患者の血圧、体温、心拍数、呼吸数をコンピュータが常に追跡し、その結果を手術室のテレビ画面に表示します。サンフランシスコのプレスビテリアンメディカルセンターでは、心臓手術から回復中の患者の状態をコンピュータが監視し、合併症が発生した場合には即座に警告を発します。ブルックリンでは、9つの病院が子供の病棟の状況を秒単位で記録するコンピュータシステムに接続されています。既に満床の病院に連れて行かれた子供は、すぐに空きがある最寄りの場所に送られることができます。ニューオーリンズのサラ・メイヨー病院では、コンピュータがバランスの取れた食事と最低限のカロリー摂取量を提供するメニューを計画しています。コンピュータは、過去に患者が表明した好みや嫌いなもの、また各食事で提供される食品の色や一貫性のバラエティの必要性を十分に考慮しています。


コンピュータのさまざまな利用法は、それ自体でカタログが必要となるほど多岐にわたります。現代版の昔ながらの「孤独な心のクラブ」は、大学生や年配の人々が自分の興味や嗜好を共有するデート相手を見つけるためにコンピュータを利用しています。(コンピュータによるデートは一時的な流行に過ぎず、個性的な特徴を示すカードを組み合わせる従来の方法と同等以上の効果はないかもしれませんが、都市全体の規模で数千人に適用すれば、将来の恋愛の標準的な一部になる可能性もあります。)印刷工場では活字の組版に使用され、航空機や船では超ナビゲーターとして使用され、エンジニアリングではこれまで解決不可能だった問題を解決し、作業用の設計図を作成します。競馬場では払い戻し率を計算し、決済します。大気汚染や水質汚染との戦い方を分析し、計画するために使用され、実験的には都市の交通渋滞の緩和や天気予報の改善にも役立っています。法律の迷宮を進むための手段を提供し、弁護士や立法者の利益のために、事実上、法の長い腕の理解力を増強します。シカゴでは、年間250万件の駐車違反切符の支払いを強制するために使用されています。連邦捜査局は全国規模のコンピュータシステムを構築しており、警察官が怪しい車両を見かけた場合、車両を視野に入れたまま、本部に電話をかけてその車両が盗まれたものであるか、あるいは犯罪と関連して捜索中であるかをほぼ即座に確認できるようになる予定です。さらに、コンピュータはより優れたコンピュータの設計と製造を支援するために使用されており、生物のようにいつか繁殖が可能になる可能性を示しています。


もしも国中のコンピュータが今この瞬間に停止したら、私たちは一斉にそれを知ることになり、そして私たちの悲しみに包まれるでしょう。電話は無音になります。セルフサービスのエレベーターは停止します。飛行機の予約は不可能になります。多くの工場が閉鎖されるでしょう。国の銀行は手作業で整理することのできない多数の小切手の雪崩によって圧倒されるでしょう。しかし、現在のコンピュータのほとんどの利用法は、私たち個人の経験とはいくぶん遠いものです。私たちのほとんどは、テレビの選挙の夜に見たことがあるかもしれませんが、コンピュータを実際に目にしたことはありません。電話やエレベーターとの接触以外では、ほとんどの人々がコンピュータを操作したことも、その活用方法を思い描いたこともありません。実際のところ、コンピュータ産業の二大顧客である政府やビジネスのほとんどの幹部は、直接的な個人的な接触を持ったことがありません。ほとんどの幹部はコンピュータを理解したり、使い方を知ったりすることができず、コンピュータとは、いくつかの謎めいた中間人であるプログラマというグループを介して取り扱っています。プログラマは、コンピュータに何をさせるかを伝えるために、コードワードや数学的な記号が満載の新しい言語を使用しています。


したがって、コンピュータ時代は多くの点で今のところ失望を招いています。コンピュータは私たちの生活を革命化するはずでした。新しい技術の驚異を私たちの指先に提供するはずでした。さらに、私たちを考え抜き、支配する可能性すらあるという暗くも魅力的な示唆がありました。しかし、これらの素晴らしい新しい機械はどこにあるのでしょうか?そして、それらは私たちのために何をしているのでしょうか?「コンピュータは、ある製造業者が認めるところによれば、「厳重に誤解を受けてきた。彼らは人々にとって全く有用ではなかった――ただし、それを運用するわずかな人々にとっては有用だった」と。しかし、その日は終わりつつあります。「過去において」、この製造業者は言います。「コンピュータは鉄道のようなものでした。大量の貨物を国中に運びたいビジネスマンにとっては素晴らしいものでしたが、自宅からオフィスに行きたい個人には全く役に立ちませんでした。しかし、私たちは新たな段階に進んでおり、コンピュータは乗用車のようになるでしょう。誰でも自由にどこへでも行きたいときに行けるようになるのです。


現在、多くの科学者が個々の人間の生活の複雑さに対応するために機械を適応させようと取り組んでいます。彼らは社会全体の大きな問題ではなく、私たちがこの複雑で困難で困惑し、時にはイライラする世界で毎日遭遇する個人の問題を考えています。例えば、MITで指導しているマックプロジェクト(Machine Aided Cognitionの略)のDr.ファノは、この特別な目標を追求しています。ファノ博士は言います。「私たちは日々ますます複雑になる問題に直面しています。私たちは収入を予算化し、請求書を支払い、小切手をバランスさせ、確定申告を行い、老後のために貯蓄や投資をするべきかどうかを決め、家を購入するか賃貸するかを判断し、新しい仕事のオファーを評価し、カリフォルニアへの引っ越しを検討し、家族の記念日を追跡し、遺言書を作成し、さらには明日の合理的な仕事のスケジュールを計画する必要があります。どうにかしてこの複雑さの天井を打ち破らなければなりません。」

| 彼らは、コンピュータを活用して個人の生活における問題解決を支援する方法を模索しています。
| 私たちは、情報を整理し、分析し、意思決定をサポートするための新たな手段を求めています。
| このような研究と開発の努力が進められることで、私たちはより効果的に日常の課題に対処し、
| 個人的な成功や幸福の追求をサポートすることが期待されます。


ファノ博士と彼の同僚が考えているようなコンピュータの利用方法は、既にカリフォルニアで進行中の実験プログラムで具体化されています。このプログラムでは、高校生がコンピュータから高度に専門的な指導を受けることができます。次の年のカリキュラムを計画する際、生徒はコンピュータにアクセスし、利用可能な科目を知ります。コンピュータは、生徒が大学に進学する予定かどうか、また進学する場合はどのような大学を希望しているのかを尋ねます。それに基づいて、大学の入学要件や高校の卒業要件を満たすためにどのような科目を取るべきかアドバイスをします。また、過去に生徒の成績記録の似たような生徒がそのような大学でどのように成績を収めてきたかを教えてくれます。彼らの中でAの成績を取った生徒がどれくらいいたのか、また挫折した生徒がいたのかを教えてくれ、彼が目標を高すぎるか低すぎるかを示唆するかもしれません。特別な問題については、学校の進路指導カウンセラーに相談するよう案内し、生徒はルーチンな質問から解放されます。


ファノ博士は指摘していますが、所得税申告書の作成を支援するために同様のプログラムが開発される可能性があります。それは、考えられるすべての税金に関する書籍よりも優れたものになるでしょう。税法の問題の一つは、あらゆる可能な状況をカバーするために法律が作られなければならないということです。そのため、税法は非常に複雑になっています。法律を説明する書籍の問題は、例を挙げることでしか説明できないということです。しかし、それらの例は私たち自身の問題とわずかに異なることが多く、その重要性や重要でなさを判断するのが難しい場合があります。コンピュータは、いかなる種類の税金の問題にも対応できるようプログラムされ、その特定のケースに対する法律の論理的な適用を解析することができます。ファノ博士はさらに、将来の所得税法は紙に印刷されるのではなく、直接コンピュータにプログラムされるかもしれないと提案しています。


あるコンピュータ科学者は、楽しみと真剣さを兼ねて、ニューヨークや他の大都市のレストランに関するアドバイスをするコンピュータプログラムについて考えています。そのプログラムは、ユーザーに対して次のような質問をするでしょう。「中華料理は好きですか?」、「小さな店と大きな店、どちらが好みですか?」、「音楽は欲しいですか?」、「いくらまで費やす予定ですか?」、「レストランは特定の劇場の近くでなければなりませんか?」ユーザーの好みと予算に基づいて、彼が気に入るであろう場所のリストを提供します。その後、実際の食事の満足度を調べることで、機械はさらにユーザーについて学び、次回はさらに良いアドバイスを提供することができます。同じプログラムは、夜や週末の過ごし方の提案に拡大することもできます。(「都市に住む人々は、驚くべき選択肢があるにもかかわらず、現時点ではそれほど選択肢を活用していません。彼らは助けが必要です」とこの科学者は言います。)それはさらに、最新の情報を持つ一種のスーパー旅行会社になることもできます。考えてみてください、コンピュータに電話して「金曜日の午後4時から火曜日の午前9時までの時間があります。どこに行けばいいですか?」と尋ねることができるでしょう。その機械は「300ドルまで費やすことはできますか?」、「釣りは好きですか?」といくつかの質問をするでしょう。そして、以下のような提案を出すでしょう。「マイアミビーチのアメリカーナホテルのスイートを75ドルで提供できます。金曜日の午後6時にイースタン航空のフライト123便の座席を予約し、月曜日の深夜に到着するフライト321便で帰ることができます。キャプテンハリーブラウンと彼の釣り船は、土曜日の朝7時にあなたを待っています」。


可能性はほぼ無限です。困惑した家庭の人々を助けるためにコンピュータをプログラムすることは完全に実現可能です。漏れる蛇口の修理方法や煙突からリスを追い出す方法など、指示を受けることができます。ベビーに関するスポック博士の知識も、本の範囲では不可能な個別の危機に対応するために、より詳細にコンピュータに組み込むことができます。医療や法律のアドバイスも、医療や法律の専門家が許可すれば、コンピュータで提供することができます。実際に、心理療法士の一部のタイプに似たコンピュータプログラムがすでに開発されています。以下は、架空の女性「患者」とのタイプライターでの会話の例です。

患者:男性はみんな同じようなものです。
機械:どのような意味ですか?
患者:彼らはいつも何かしら私たちに迷惑をかけてくるんです。
機械:具体的な例を思いつけますか?
患者:まあ、私の彼氏が私にここに来るように言いました。
機械:あなたの彼氏があなたにここに来るように言ったのですか?
患者:彼は私がほとんどいつもうつ気分であることに気付いたんです。
機械:うつ気分であると聞いて、残念です...

そして、セラピストとの50分間のセッションのような内容が続きます。


コンピュータ科学者の考えでは、もう1つの目立つ機械の利用方法はショッピングです。シアーズ、ローバック(Sears, Roebuck)のような印刷カタログは、出版と配布の費用がかかるため、おそらく姿を消すでしょう。その代わりに、ショッパーはシアーズ、ローバックやお気に入りのデパートのコンピュータに電話をかけ、利用可能な商品を尋ね、テレビ画面でそれを見て、質問をし、ほとんどの今日の店員から得られるよりも賢くて完全な回答を得ることができるでしょう。おそらく、購入代金はコンピュータ上のお金で支払われ、顧客自身の銀行口座から店舗の口座に直接送金されるため、小切手を書いたり送ったりする必要はありません。このような金融取引は、デラウェア銀行と一連の靴店によって設立された実験プログラムで既に成功しています。顧客が靴を購入すると、店員はタッチトーン電話を使用して銀行のコンピュータに電話し、顧客の識別番号を入力し、販売額を示すボタンを押します。この方法は広まるでしょう。なぜなら、国内で書かれる小切手の量は約7000万枚/日となり、コンピュータでの小切手の仕分けを行っていても手に負えなくなっているからです。銀行には、小切手を処理し、最終的に作成した人々に返還するために、年間30億ドル以上かかっています。


知的な公共施設を設立する上での物理的な障壁は非常に深刻ではありません。実際のところ、既に科学者を支援するために設計されたこのようなシステムは、MACプロジェクトの下で運用されています。MITキャンパス内および教授の自宅には、テレタイプライターという形で分散配置された160の「アウトレット」があります。これらのタイプライターは、MAC科学者とコンピュータメーカーによって開発されたタイムシェアリングプログラムの下で、各々が同時に30人のユーザーに対応できる2つの別々のコンピュータに接続されています。MITの教員や学生はこのシステムを頻繁に利用しており、特に高度な研究における複雑な数学的計算に役立てています。ある工学教授は、自身の専門職のバッジであったスライドルールを3年間使っていないと述べています。


同じ種類のタイムシェアリングコンピュータシステムは、比較的容易に地域全体に提供することができます。各家庭には、テレタイプライターだけでなく、画面も含まれるようなコンソールがあり、それが現在のように電力や電話センターに接続されたコンピュータセンターと接続されます。機械はユーザーと話すこともできるかもしれませんが、おそらく人間の話を理解することはできません。(機械が聞くことができるようにするのは、話すことができるようにするよりもはるかに難しいため、科学者の間でも、いつ、もしくはもし可能であるとすれば、聞くことができる機械が利用可能になるのはいつなのかについての意見は分かれています。)物理的な問題は解決しやすいですが、他にも難題があります。その1つは、私たちのほとんどが自分の特別な用途のためにコンピュータのプログラムを学ぶために2年間もの時間を費やすことにあまり興味を持たないだろうということです。専門家たちは、一般の人々がコンピュータをより簡単に使えるようにする方法を見つけなければなりません。ファノ博士の言葉を借りれば、「ユーザーは、現在ビジネスをよく知っているアシスタントとビジネスマンが話すのと同じくらい簡単に機械と話せるべきです。実際、機械は熟練かつ知識豊富なアシスタントであるべきです」ということです。ただし、この方向性の進展は絶えず進んでいます。コンピュータ科学者は、自動車が導入されたとき、人々が所有し運転するためにはエキスパートの整備士でなければならなかったことを指摘します。今では、彼らは言います、コンピュータもまた、自動車がずっと前に行ったように、誰でも操作できるようになってきています。


将来の知識の共有施設は、私たちの家庭に何をもたらすのでしょうか? ファノ博士は、コンピュータが将来的には巨大なメモリを持ち、特定のコミュニティのすべての知識を含む日本の最高の図書館に存在する知識、そして個人の日常の業務報告書、財務記録、納税申告書、医療歴など、あらゆる情報を含む日が来ることを予見しています。現在では、一つのページに相当する情報をコンピュータに格納するコストは、一部のシステムでは月に10セント程度にまで低下しています。おそらく将来的には、情報を本やファイリングキャビネットよりもコンピュータに格納する方が安価になるでしょう。その日が訪れると、コンピュータは蓄積された世界の知識とスキルを私たち自身の個人的なサービスに提供します。人々は、微積分の問題の解決策を勉強せずに求めることができたり、建築のコースを受けずに新しい家の設計を行ったりすることが可能になるでしょう。要するに、知識の共有施設は、膨大な情報のデータベースにアクセスすることで、従来は広範な学習や専門知識が必要だったタスクや知識の獲得を個々の人々に可能にするものです。


将来のコンピュータは、生活を非人間化するのではなく、むしろ個々の多様性を大いに生み出すでしょう。実際に、既に質的な変化をもたらしています。コンピュータは、さまざまなモデルとオプションが増える自動車の製造を可能にし、ロサンゼルスでは、顧客が75のダッジのショールームのどこにでも入って行き、6500台の車の在庫からすぐに自分が望む車を選ぶことができます。コンピュータ化された教育機器は、大規模なクラスでは不可能な個別の教育を小学生に提供し、彼らの背景や進歩の能力に合わせてカスタマイズされています。コンピュータは、村の司書がパトロンのことをよく知っていて彼の興味を引く新しい本を提案できる素晴らしい昔の日の一部をもう一度思い起こさせることさえあります。IBMの大規模な技術図書館では、スタッフのプロフィールが機械に入力され、彼らが見たいと思う新しい本や記事の要約が自動的に送られます。将来的には、コンピュータが朝のニュースレターや新聞を特定の読者のニーズに合わせて印刷する可能性が非常に高いでしょう。個別にカスタマイズされた雑誌やテレビ番組を作成し、人々が自分だけの特別な家具や新しい自動車をデザインすることができるかもしれません。さらに重要なレベルでは、コンピュータは私たちを最近の「忍び寄る官僚主義」と呼ばれる制約から解放する可能性があります。現在の多くの規則、規制、検査、許可は、密集した社会が混乱に陥るのを防ぐために設計されていますが、情報が自由にほぼ瞬時に循環する社会では、多くの制約はおそらく不要になるでしょう。


このことから、問題は次のようなものになります。これらの機械は実際にどれくらい知的なのでしょうか?彼らは学習できるのでしょうか?思考できるのでしょうか?創造することができるのでしょうか?また、あるジョークでよく使われるような、機械同士で「人間を信じますか?」と尋ねる場面に到達することはあるのでしょうか?


これらの質問のほとんどに対する答えは、現時点では誰も正確には知りません。科学者たちは、この関連で「人工知能」というフレーズを使用しており、その機械がそれを持っていると考える人もいれば、持っていないと考える人もいます。


確かに、機械は学習することができます。カリフォルニアの高校生に助言をする機械は質問をし、回答から各生徒の特性を学び、一般的な助言だけでなく、彼個人の特別なニーズに合わせたガイダンスを提供します。バージニア大学では、試行錯誤によって問題を解決するために学習するコンピュータシステムが開発されました。MACプロジェクトの一部であるELIZAという言語プログラムも同様であり、ピグマリオンやマイ・フェア・レディのエリザ・ドゥーリトルのように、徐々に言語を上手に使用するように教えることができます。実際に、ELIZAに英語のフレーズを教えた後、ドイツ語の対応するフレーズも学ぶことができます。オペレータは単に「Ich sage」と言ったら「I say」という意味だと教えるだけで、機械はそれを覚えます。


しかしながら、心理学の入門コースを受けたことがある人なら誰でも知っているように、人間の脳は奇妙で驚くべき方法で問題を解決します。私たち全員が、事実や数学の法則、関係に関する知識という大きな記憶の銀行を持っています。私たちは思考の中で、時には論理のルールを通じてこの知識を操作します。例えば、すべての哺乳類は子供を哺乳類であるため、クジラも子供を哺乳類であると私たちは知っています。他の場合には、個々の自由連想に似た方法でそれを操作します。牧師にとって、「天使」という言葉は天使-天国-神-聖霊-聖母-山上の垂訓といった連想を引き起こすかもしれません。一方、アスリートにとっては、連想は天使-飛ぶ-フライボール-野球-ウィリー・メイズといった具体的なものになるかもしれません。もし機械が真に創造的になるのであれば、このようなランダムで自由な、やや偶然的ですが非常に生産的な方法で思考することを学ばなければなりません。それは可能でしょうか?たぶん可能かもしれませんし、そうでないかもしれません。まだこのような方法で機械に思考させる試みは誰も行っていません。


人工知能に関する実験は、ほんの20件ほどしか行われていません。そのほとんどは、博士号を取得するために取り組んでいる大学院生によって行われました。学生たちは最も有望と思われる方法を試してきましたが、ランダムな思考は含まれていませんでした。しかし、彼らは本当に驚くべき結果を出しています。MITの学生の1人は、コンピュータに代数の問題を解かせる方法を教えました。この問題は数学的な言葉ではなく、普通の英語で表現されています。「メアリーはアンが現在の年齢だったときのアンの2倍の年齢です。メアリーが24歳の場合、アンの年齢はいくつですか?」(Annが18歳であることをすばやく計算できない限り、この種の問題ではコンピュータの方がはるかに優れています。)別の学生は、知能テストによく含まれる幾何学的な類推の問題を解くためにコンピュータを教えました。例えば、「犬は吠えるのと同じように、ノコギリは何? ブレード、木材、切る、うなる、ツール?」といった問題です。この問題でも、コンピュータは見たこともない幾何学的な図形でさえも、平均的な10歳児と同じくらいの成績を残すことができます。そして今、MITの学部生の別の学生が、コンピュータに言語的な類推問題を解かせる方法を教えています。


もちろん、よく言われることですが、機械はプログラムされたことしかできないということです。そして、そのプログラミングを行うのは人間です。これは人間のプライドを慰めるものであり、機械の新たな成果に対する定型的な反応となっています。しかし、人工知能を信じる科学者たちは、人間の脳もまたプログラムされなければならないと指摘しています。私たちの思考プロセスは、生まれてから受けた情報と指導、特に目と耳を通じてのものの結果です。さらに、コンピュータのプログラミングは、広告されているほど正確な科学ではありません。最初は非常に正確である必要がありましたが、現在ではMITのマービン・ミンスキー教授の言葉によれば、「プログラマーは正確に何をしているのかを知らなくても構わないし、実際にはかなりずさんであってもかまいません。」彼らは自分のプログラムがどのように動作し、なぜ動作するのかを常に理解しているわけではありません。また、プログラムが対話によって修正や拡張されると、その柔軟性はますます高まっています。ミンスキー教授は「人々はプログラムが特定の目的には適しているが、柔軟性に欠けると主張しています。しかし、タイプライターやバイオリンもまた柔軟ではありません。使い方を学ぶまでです」と述べています。将来の情報公共サービスのコンピュータでは、さまざまな人々と会話し、さまざまな新しい事実を学び、さまざまなタスクを実行するための指示を受けることになります。ユーザーは、新しい種類の問題を提示し、単に「過去に解いた問題の中で、この問題に最も似ているのはどれですか? その方法を試してみてください」と機械に伝えることで解決策を得ることができるかもしれません。そして、おそらくミンスキー教授は、機械が自分自身では思いつかなかった方法で解決策にたどり着く可能性もあると考えています。個々の人間が機械の中に何が含まれていて、したがって何が出てくるかをすべて知ることはありません。機械を操作するためにはほとんど特別な訓練は必要ありませんが、おそらく一部のユーザーの方が他の人よりも機械との相性が良いかもしれません。「一部の人々は自然に得意なのです。それはスキーが得意な人と同じようなものです」とミンスキー教授は述べています。


最終的に、ミンスキー教授は、機械は自己改善のためにプログラムされるようになります。彼らは自己の努力でますます優れていくでしょう。そして、疑いなく、知性、直感、意識と呼ばれる特性を示すようになり、世界は二度と元のままには戻らなくなるでしょう。彼らは人間と同等か、それ以上になるのでしょうか? ゼネラル・エレクトリックのジョージ・フィーニー博士は、「その質問が本当に重要でなくなる時代になると思います。もし楽観的な人文主義者なら、機械は人間の延長であると言うでしょう。そして、もし悲観的な現実主義者なら、人間は機械の延長であると言うでしょう」と述べています。

*1:が、 当時は「ちゃんと動作する実装」であることを重視したので Charles HaydenEliza test を選んで取り上げました。

elizagen.org は蓄積されている情報が 断片的かつ未整理だったことも棚上げした理由です。

*2:ELIZAが登場した1960年代、 OSや開発ツールを含むソフトウェアは ハードウェアの付属物の扱いで 標準化がほとんど進んでいなかったため、 メーカーはおろか機種ごとに 互換性のないOSや開発ツールを使っていました。 それ故、 特定の言語で書かれたソースコードを配布すること自体が ナンセンスだった実情があります。